2011年1月31日月曜日

映画「死なない子供、荒川修作」

見に行った日:2011.1.31


会期:〜2011.2.11
会場:イメージフォーラム


荒川修作さんの映画「死なない子供」を観た。
映画監督は、三鷹にある「天命反転住宅」に自ら住んでいる山岡信貴さん。「天命反転住宅」の住人に取材しつつ、荒川さんが講演や、この住宅の説明会で話した言葉が紹介される。荒川さんって、ちょっと恐いくらいにぶっきらぼうで、怒ってるのかと思うような話し方をする人だと思っていたのだけれど、そしてもちろん、その話し方で、映像の中でも話しているのだけれど。

荒川さんが考えていることは、現在、普通に使われている日本語では表せないんだ!
その言葉で表現できないもどかしさが、あの話し方になったんだ!

と、腑に落ちた。

「哲学者なんて何もしてない」
「人類は何もわかってない」

と、否定的な物言いとは対照的に、「生きること」への圧倒的にポジティブな姿勢/態度を感じた。

何だかわからないけれど、ハンマーでアタマを殴られたような衝撃を受け、それに打ちのめされるのではなく、その衝撃が、「命」「生」へのポジティブな肯定となって、自分の中に残っている。

「1万年後に会おう」とスクリーンの最後に荒川さんのメッセージ。

うん、1万年後なら会えるような気がするぜ、荒川さん。

(2011.2.4発行 artscape news に掲載)

2011年1月25日火曜日

[project N] 吉田夏奈展

見に行った日:2011.1.16


会期:2011.1.15〜3.27
会場:東京オペラシティアートギャラリー


[project N] は、若手作家を取り上げるシリーズで、オペラシティアートギャラリーの2Fのコリドール(廊下のような展示空間)で行われている。企画展とは特に関連させてはいなかったように思う(少なくとも私がこれまでみた限りでは)。だから今回もそのつもりで、曽根裕展を観てからこちらを観た。

長い壁の長さをめいっぱい使って、複数のキャンバスが並べられていて、山が描かれている。描いている道具はクレヨン。緻密な筆致の絵画なのだが、自然物をスケッチしたのとは違う感じで、いわゆる写実的な絵画ではない。が、この息が詰まるような緻密さは何だろう。そこにごろごろと転がっている岩の感触が伝わってくるような、そんな緊密な距離感。身体が感じた世界を、キャンバス上に転写するような感じ、というのか。

...ん? この、世界の捉え方って、曽根とよく似ているじゃないか。形態は違うけれど、同じ方向を目指している。これは希少な...

と思って、解説文を読んで腑に落ちた。吉田夏奈は、2003年に曽根が秋吉台でやった、「理想の洞窟」のワークショップの参加者だったのだ。「理想の洞窟」は、私も観に行っていた。その記憶を思い起こしてみると、「カナちゃん」と呼ばれていた子がそういえばいたなぁ...と思い出した。絵画を手がけるようになったのはそのワークショップが契機になったそうだ。それを知ってから改めて眺めてみると、作品のあちこちに、“曽根的なもの”を感じた。それは決して「真似」ではない。表現の根幹にあるものが、「共通」している、というか、根幹にあるものを「共有」しているのだ。

吉田夏奈は、曽根の真の理解者であり、正統的後継者である。

...まさに、こういうのを“Perfect”って言うんじゃないか!
「やられた」感、倍増。

2011年1月17日月曜日

曽根裕「Perfect Moment」

見に行った日:2010.1.16


会期:2010.1.15〜3.27
会場:東京オペラシティアートギャラリー


本当に久しぶりの、曽根裕の日本での展覧会。オープン早々、行ってみた。
広い展示室をどーんと使った展示である、、ったって、ギャラリーの中にジャングル作るんだからそれくらい広い空間が必要だ。
ちなみに、この展覧会と並行して銀座のエルメスでやってる曽根の展覧会は「雪」。冬の凍てついた空気を感じる風景。一方、こちらはジャングルで、季節は対照的だし、大理石の作品も「木のあいだの光」で、まぶしく暑い夏の日を思い出す。そういう見せ方、どれくらい本人が意図的にやってるか分からないけど、うまいよなぁ。

映像の作品は、「ナイトバス」と「バースデイパーティ」。どちらもできあがる過程から見てきた、私にとっては懐かしさを覚える作品だが、改めて全編観てきた。しかしこれ、もう15年とか前の作品になっちゃうんだよな〜。それなのに、今観ても面白いし、色褪せないし、リアルだ。
ひたすら移動する車窓風景が続く「ナイトバス」は、観る者を一気に旅気分にさせてくれる。
ひたすらバースデイパーティを繰りかえす「バースデイパーティ」は、観る者すべてをハッピーにしてくれる。
そうだよね、毎日がお誕生日だったら楽しいよね。毎日旅していたら楽しいよね...。

廊下の空間を区切って、水晶の「木のあいだの光」の作品が1つだけ展示されていた。照明を狭いところに集めて照らしていて、ほんとに木の間からこぼれる光を見るような感じだった。そういえば、いつぞやの夏、曽根のうちの別荘にお邪魔した際、木の間からこぼれる光をずっと見ていたことを思い出した。

あいつ、なーんも変わってないわ。気になるもの、好きなもの、目指すもの。ずーっとおんなじ、ずーっと追っかけ続けてる。それが「Perfect Moment」、完璧な瞬間。
今回、それはもうここにあるじゃんか、と思ったけど、曽根は「まだまだ」って言うんだろうな。まだまだ、追っかけ続けるんだろうな。もっともっと完璧なのを、って。

翻って、私は、追っかけ続けてるものの片鱗にでも触れているのだろうか。かすってもいないような気もするな。何やってんだか。もうちょっと頑張らなあかんな。などと自己反省。

ショップでカタログを買おうとしてビックリ。裏表紙が破れてる!
...実は、そういうデザイン。そんな本、初めて見たよ。

2011年1月10日月曜日

観たいもの/観る予定のもの(1/10現在)

・曽根裕展 東京オペラシティギャラリー 1/15〜3/27
・小谷元彦展 森美術館 11/27〜2/27
・荒川修作「死なない子どもたち」イメージフォーラム 21:00〜(1/15より11:00〜の回もあり)
・高嶺格展 横浜美術館 1/21〜3/21
・擬態美術協会/鍵豪 TOKIO OUT of PLACE 1/13〜2/6

森田浩彰「Timequake」

見に行った日:2011.1.8

森田浩彰「Timequake」
会期:2011.1.8〜2.5
会場:青山|目黒


この、「青山|目黒」も、ずっと行きそびれていた場所で、ようやく行くことができた。中目黒の駅から結構歩くのだ。通りに面してガラス張りなので、到着するなり、中にいた青山さんが気づいてくれて、ドアを開けてくださった。

作品が音を立てている。立てかけてあるような木材が壁に当たる音。そして壁の端っこでは、短くカーブした針金が2つ、不思議な動きをしながらのたうち回るように絡みながら張り付いている。天井の蛍光灯はふらふらと揺れ続けている。床には床を写したビデオが流されている。 「地震」をテーマにしている、と聞いて、腑に落ちた。木材が壁に当たる音は、確かに地震を思い起こさせる。揺れている蛍光灯や、時々ブレる床のビデオを見ていると、自分が揺れているのか、見ているものが揺れているのかわからなくなる。揺れている感じだけが自分の中に残り持ち帰られる。これは地震で揺れたあとに良く似ている。揺れている感じだけが自分の中にだけ残っている、この感じ。

壁で不思議な動きをする針金は、ここの展示作業をするうちに思いついたというか、偶然発見した現象から作品化したものだそうだ。自分で全て作ってない感じ(針金の動きは制御できないし予想もできない)が、作者自身も新鮮に感じていると話していた。この作品はずっと見てても見飽きない。

ほんとは全ての動きが止まった瞬間があるとカッコいいのかも。と言ったら、ほんとは、タイマーで時々止まったり動いたりするようにしたかった、とのこと。ぜひ、今度はそれを実現して欲しいな。

「破壊があって初めて生まれるものがある」 と、照明器具を壊して作られた作品を前に、作家が言ったことばがとても印象に残った。スクラップ&ビルドだって、悪いことばかりじゃないはずだ。

作家と直接話すのは面白くて、ついつい長居。この日は歩き疲れたこともあり、ここで打ち止めにして帰宅。

2011年1月9日日曜日

立石大河亞「音雷韻走査」

見に行った日:2011.1.8

立石大河亞「音雷韻走査」
会期:2011.1.8〜2.5
会場:山本現代


山本現代も、ずっと、来ようと思いつつ、来れないでいたところ。Misa Shin Galleryからは近いようなので行ってみた。新年最初の展覧会なので、派手に来るのかと思いきや...。見た目は派手だけど、平成4年とか6年とかが制作日として描かれている旧作ばかりだった。テーマはオンラインとかネットワークみたいなことのようだけれど、そういう時代に即したテーマはどうしても賞味期限があるんじゃないかな。やっぱり古臭く見えてしまう。

鉛筆描きのドローイングというか、漫画みたいにコマを作ってショートストーリーを描いている作品が2点ほどあって、最初車の外にある風景が、車の中を埋め尽くしてしまう、というような作品があったが、こっちの方が私は好きだな。あり得ないけど、想像の上では描ける、存在できる世界。同じ日に見た、山口晃の作品とも通じるところのある、ナンセンス度やフィクションとリアリティの間を行く感じ。

山本さんにはお目にかかれず残念。

アイ・ウェイウェイ「Cube Light」

見に行った日:2011.1.8

アイ・ウェイウェイ「Cube Light」
会期:2010.11.19-2011.1.29 2.19←延長になりました!
会場:Misa Shin Gallery

昨年11月に新たにオープンした、Misa Shin Gallery。最初の展覧会が、この展覧会。
今回初めて来てみたが、古い倉庫のような建物で、天井も高くて、ちょっと狭いがいい空間。その空間にほとんどめいっぱい、という大きさの作品。...ということは、この作品、ここで作ったのか?作業するのも大変そうなサイズ。もう少し作品と距離を取って、全体を眺めたいのだが、引きが足りないのが残念。
透明な色の付いたビーズで面を埋めてキューブにしたもので、圧倒的な大きさと、ビーズに反射してる光が美しい。有無をも言わさない感じが、アイ・ウェイウェイらしいというか、辛さんらしいというか(笑)

西野達「西野達 別名 大津達 別名 西野達郎 別名 西野竜郎」

見に行った日:2011.1.8

西野達「西野達 別名 大津達 別名 西野達郎 別名 西野竜郎」
会期:2010.12.17〜2011.1.8
会場:アラタニウラノ


アラタニウラノには初めて行った。銀座から歩いて行ってみたが、そんなに無理な距離でもないようだ。


西野さんは、いろんな名前で作品を発表しているが、これが「名前交換プロジェクト」というものだというのは、今回初めて知った。なるほどね〜。名前だって、必要に応じて(必要などなくても?)交換しちゃえばいいんだ。

東京タワーにまつわるプロジェクトのアイデアが、いくつか展示されていたが、「東京タワーと通天閣を交換」というプロジェクト、やってみたらおもしろいだろうなと思ったりして。というか、これが一番、できそうな感じがする(笑)

「豆腐の大仏」のドローイングと写真も展示されていた。「やってみたいっ!!」と思うエネルギーの大きさがドローイングに溢れている。実際の「豆腐の大仏」は、あっという間に壊れてしまったらしいのだが。


西野さんの作品は、やっぱり現場で体験するのが一番面白い。ギャラリーで扱えるのは、それが実現する前の段階のドローイングか、もしくは、それが実現したことの記録である。一番面白いところは、売り買いができないのだ。
ギャラリーとしても売りにくい作家だろうと思うのだが、頑張っているようで、この展覧会、作品は良く売れていたみたい。

山口晃展 東京旅ノ介

見に行った日:2011.1.8


山口晃展 東京旅ノ介
会期:2010.12.28-2011.1.10
会場:銀座三越8階催物会場
入場料:500円

会期終了間際ということもあり、とても混雑していた。老若男女を惹きつける魅力があるんだなと改めて思うほどに、観客の層が広い。いつの間にかこんなにポピュラーになってしまったんだ、この人は。

細かく描き込まれた絵は、ついつい近寄って見入ってしまう。見れば見るほど発見があり、風刺も効いていて、素直に見ていて面白い。あり得ないような風景であっても、見る側はそんなに気にせずに受け入れてしまう。形式的には昔の絵巻物のようなスタイルだけど、内容的にはラディカルで「現代美術的」だと思うんだが。「わかりやすい」というか、「とっつきやすい」んだな、きっと。

「露電」と称して、谷中辺りに路面電車を走らせるアイデアを描いたものなどは、アートではなく、実際の提案としても面白いものだと思った。絵で描くならばどんなアイデアだって実現可能。それはまさにフィクションの面白さ。

後半、「電柱の美」 についてのテキストとインスタレーションで構成された空間が妙にゆとりがあって、それまでの平面作品を見てきた空間の密度と落差がありすぎな感じ。こんなにスペースあるんなら、平面の作品をもっとゆったりと見せてくれたら良かったのに。
というか、最後の空間で、展覧会としてのテンションが下がっちゃった感じがしたのだ。こういう会場に、展覧会としてのテンションを求めるのが無理な話だとは思うけれど。

今度はどこかの美術館でビシッとした展覧会として観たいなあ。

いまさらだけど

ブログを使ってみることにする。
いろいろ見たものなどについてメモしておきたいと思ったのです。
以前は自分でXOOPS立ち上げて作ってたけど、めんどくさいし、
いつまで続くかわからないし、余計な手間掛ける必要はないだろうと。